おしりの病気なのか?
大腸の病気なのか?
排便時などお尻から血が出た場合、痔からなのか大腸からなのかによって疾患が大きく違ってきます。近年は大腸がんの罹患率が男女共に増加傾向にあるため、注意が必要となります。特に、便に血液が混ざっている、または赤黒い血液が出る、どろっとした血液が付着するなどの症状がある場合は大腸からの出血が考えられます。このように、大腸からの出血の可能性がある場合は、大腸カメラ検査を実施して確認します。
いぼ痔かどうか
お尻からの出血と一緒に内痔核(いぼ痔)が脱出していれば、いぼ痔による出血の可能性が高いと考えられます。いぼ痔による出血の特徴として、真っ赤な血がポタポタとたれてきます。ただし、潰瘍性大腸炎や大腸がんによる出血も似ている場合があるため、判断が困難な場合があります。この場合は、大腸カメラ検査を行って直接確認する必要があります。
医師はどう診断しているのか?
肛門科の専門医は、まずは視診によって出血の原因を見極めます。外痔核や皮膚からの出血、痔ろうの有無などを確認します。その後、肛門指診を行います。指を直接肛門内に入れ、直腸内に触れながら病変の有無を調べます。指を抜く際に血液が付着するかどうかも確認します。最後、肛門鏡診察を行い肛門内を直接診ます。出血の原因が、切れ痔・いぼ痔・ポリープ・何らかの炎症や疾患なのかを判断します。
肛門診察だけでは不十分!
上記の視診や指診、肛門鏡診察だけでは不十分なことも多く、丁寧に問診をしながら出血の原因を特定することもあります。同じ切れ痔でも急性の場合は、受診時には傷が回復している場合もあります。肛門周囲にその他の症状がないか、患者様との対話によって診断することがあります。
出血の原因となる病気とは?
お尻からの出血が起こる代表的な疾患とその特徴を以下に挙げてみます。
1.いぼ痔
内痔核
排便後、便器が鮮やかな血液で染まることがあるほか、鮮血がポタポタと垂れることが多いです。痔が大きくなると、出血が続くことで直腸下部に溜まり次の排便時にシャーっと勢い良く出てくることがあります。
外痔核
腫れがそれほど大きくなく、違和感程度の外痔核の場合、そのまま気付かずに放っていることもあります。外痔核は、肛門の外側に出ているため、歩く際に擦れて違和感があるほか、擦れることで徐々に痔核表面に穴があいて出血を起こします。この状態にまでなると、排便に関係なく出血が起こります。下着が血液で赤く染まって気付くこともあります。
2.切れ痔(裂肛)
切れ痔は、痛みが伴い出血が起こるのが特徴です。痛みがない場合もあります。トイレットペーパーに鮮血が付いたり、ポタポタと垂れたりします。痛みと出血がある場合は、切れ痔であることが多いです。
3.直腸粘膜脱
強いいきみを行う習慣が原因で靱帯が緩み、直腸粘膜がずり落ちた状態です。高齢の方に多くみられるほか、アナルセックスを繰り返すなども原因となります。直腸粘膜が擦られるので、徐々に潰瘍になって出血します。これを直腸粘膜脱症候群と言いますが、進行すると直腸粘膜が肛門の外に脱出し、出血によって下着が赤く染まるようになります。出血には粘液が混ざることもあるほか、粘膜が折り重なることでそれが便意となり、常に排便を催したい感覚になることがあります。
4.潰瘍性大腸炎
大腸粘膜が炎症した状態で、腹痛や下痢、血便などの症状が起こります。出血の際は、膿性粘液といって鼻水のような液体が混ざることがあります。痔や大腸がんなどの出血にも似ているため、検査を行って判断する必要があります。
5.大腸憩室出血
腸管内の圧を受け続けることで、大腸壁が窪んだ状態が大腸憩室と言います。これだけでは病気とはされませんが、大腸憩室内の血管が破れて出血を起こすことがあります。排便とは別に、血液だけが多量に排出されます。血液の色は、鮮血から赤黒色です。
6.虚血性腸炎
大腸粘膜内の血管が一時的に滞り、虚血状態になることで腸粘膜に炎症が起こります。S状結腸が好発部位であるため、左の下腹部にはげしい痛みが起こり、下痢のあとに血便が現れるのが特徴です。。主に、便秘や脱水状態、下剤服用による蠕動運動が激しくなることが原因となります。ポリープやがんがないか、大腸カメラで確認することが必要です。
7.大腸がん・直腸がん
大腸がん
大腸にできるがんを指します。主に、盲腸、上行・横行・下行・S状結腸に起こるがんのことを言います。盲腸など口側にできたがんの場合は、便が固まる以前に血液が混ざるため便の色は赤黒色となり、肛門側にできたがんの場合は鮮血となります。大腸がんの診断には、大腸カメラ検査を行います。
直腸がん
肛門側に近いがんのため、出血は鮮血となります。ただし、いぼ痔からの出血と似ているため区別が困難なケースがあります。排便の際の出血はポタポタと垂れる程です。出血がある場合は、すでに進行がんになっていることも多いため注意が必要です。
8.肛門ポリープ
肛門ポリープがあってもほとんど出血はありません。ポリープが大きくなって、根元が裂けたり脱出したりすると出血が見られます。痛みが伴い、出血は鮮血となります。
9.痔ろう
トンネル状の痔ろうによる二次口が破れると出血が起こります。血膿といってドロっとした血液が排便に関係なく常に少量出ることがあり、下着が汚れて気付くことがあります。
10.皮膚炎
肛門周囲が皮膚炎によってただれて出血します。痒みなどによる掻き過ぎ、擦り過ぎ、拭き過ぎなどが原因となります。
よくある質問
排便後、しっかりと拭いても下着に血液が付着します。なぜでしょうか。
排便後にお尻をよく拭いたのに下着に血液が付着する場合、肛門の外側にまで切れ痔があることがあります。通常、お尻は肛門括約筋で閉められていますが、肛門外側にまでは括約筋はないため、切れ痔があると歩いたりすると擦れて出血し、下着に付いてしまいます。
下痢が1カ月以上続いて、血液が混ざっています。原因は何でしょうか。
1カ月以上続く下痢・血便の場合は、潰瘍性大腸炎の可能性が考えられます。稀に、腸アメーバ症であることがあります。発症初期段階であれば、急性胃腸炎が疑われますが、1カ月以上長期にわたって続いているため、肛門鏡検査または大腸カメラ検査などで診断する必要があります。
便に筋のような血液が混ざっています。疑われる疾患は何でしょうか。
排便時に痛みが伴う場合は、切れ痔が考えられます。その他では、直腸ポリープが便の通過などで出血している可能性もあります。