お尻の痒み
お尻の痒みにお悩みの方は多く、医学的には肛門掻痒症といって人口の約5%の人には症状がみられるとされています。そのうち、原因の明確な続発性肛門掻痒症と、原因が不明である特発性肛門掻痒症とに区別されます。特に、40~60代の男性に多く発症がみられます。肛門周囲に痒みがあっても、恥ずかしさから受診をためらう方も多く、ご自身で市販薬を塗布しても改善されず、痒みを我慢できず来院される方も多くいます。
お尻が痒い原因
お尻の痒みを引き起こす原因として考えられるのは約100種類とも言われますが、以下には比較的原因が明らかなものを取り上げます。
お尻の手入れ
排便後のお尻の手入れが不十分だったり、またはお尻を洗い過ぎたりすることで痒みが起こります。
肛門周囲の便による汚染
大半の場合、下痢が原因で肛門周囲の皮膚が便にさらされて痒みが起こります。稀に、便秘でも起こりますが、肛門周囲の皮膚は過敏性が高く、便に長時間さらされることで痒みを起こします。
肛門周囲の感染症
細菌や寄生虫、真菌による感染が原因で痒みが起こることがあります。特に、ステロイド薬や抗生物質を使用している方や糖尿病罹患者などに多くみられます。溶血連鎖球菌や黄色ブドウ球菌、コリネバクテリウムなどによる感染の場合は1年以上にわたって痒みが続きます。
接触性アレルギー性皮膚炎
ハンドクリームや乳液、石鹸、トイレットペーパー、ウェットティッシュなどに含まれる化学物質によるアレルギー反応として痒みが起こることがあります。
食べ物
肛門括約筋を弱める、消化不良を起こす、便が緩くなる食品には、カフェイン・アルコール・香辛料・柑橘類・乳製品・チョコレート・ピーナッツ・トマト・ブドウなどが挙げられます。
直腸肛門疾患に伴うもの
過敏性腸症候群や痔核、裂肛、痔ろうなどによって痒みが起こることがあります。
皮膚疾患や新生物
肛門がん、乾癬、ボーエン病、パジェット病など、肛門腫瘍が起因して痒みが起こることがあります。
薬に起因するもの
抗生物質やステロイド剤を使用することで痒みが起こることがあります。
衣服に起因するもの
衣服の化学繊維は肌が蒸れ、肛門周囲の皮膚を悪化させることがあります。また、洗濯洗剤や柔軟剤、漂白剤などの化学物質や香料によって皮膚が炎症を起こすことがあります。
全身疾患の局所症状や精神的なもの
糖尿病・腎不全・肝疾患・甲状腺機能亢進症・リンパ腫・白血病・鉄欠乏性貧血によって痒みが起こるほか、精神疾患など精神的な緊張や不安感などで症状が現れることがあります。
温水便座症候群
温水便座の普及に伴って増加傾向にあるのが、温水便座症候群です。肛門の皮膚は、適度な油分によって健康が維持されていますが、温水便座を使い過ぎることで油分が過剰に流され、乾燥しバリア機能が失われてしまいます。これによって常在菌まで失われてしまい細菌感染を起こすことがあります。
お尻の痒みの治療
痒みの原因が明確な場合は、その原因疾患を治療します。原因が明確に分からない場合は、石鹸や化学物質の使用を控え、擦ったり掻いたりと刺激を与えるのを止めてください。食品が原因の可能性がある場合は、原因となる食べ物の摂取をまずは2週間止めます。また、ステロイド剤や抗生物質の使用を控える、非ステロイド性軟膏を使用するなど工夫が必要です。夜中に痒みが強くなる場合には、抗アレルギー内服薬を処方することもあります。痒みにお悩みの方は、その原因を特定することが優先されるため、自己判断は禁物です。まずは、受診して痒みの原因を特定することが大切です。