過敏性腸症候群(IBS)について
大腸カメラ検査を行っても器質的異常がみられないにも関わらず、便秘や下痢、腹痛、腹部膨満感などの異常が起こる状態が、過敏性腸症候群です。消化管機能は自律神経によってコントロールされているため、過度なストレスなどが原因となって発症するとされています。
過敏性腸症候群の原因
自律神経によって腸の蠕動運動がコントロールされています。過度の緊張やストレス、不安、睡眠不足などによって自律神経のバランスが乱れることで、様々な消化管症状が起こります。また最近では腸内細菌叢などの関与も示唆されています。
過敏性腸症候群の症状
下痢型
激しい下痢と腹痛に突然襲われます。下痢と腹痛を何度も繰り返しますが、排便後は苦痛症状が緩和します。緊張や不安など過度の心的ストレスによって自律神経が乱れ、発症すると言われています。感染性腸炎の後に発症することもあります。また突然、便通異常の症状が起こるかもしれないという不安や緊張が、症状の悪循環を招きます。
便秘型
便秘や排便困難、残便感、腹痛などの症状がみられます。排便時に強くいきむことから、切れ痔やいぼ痔を発症することもあります。
交代型
下痢と便秘を繰り返し起こし、激しい腹痛が伴います。
その他
便通異常のほか、腹部膨満感や腹鳴(お腹がグーグーと鳴る)、おならなどの症状が現れます。
過敏性腸症候群の検査・診断
問診を行い、便通異常の症状やお悩み、症状が起きたきっかけ、便の状態などについてお伺いします。また、生活習慣についても伺います。その上で、必要に応じて大腸カメラ検査や血液検査を実施します。
RomeⅢ基準
大腸カメラ検査を行い、病変の有無を調べます。病変が確認されなかった場合は、以下のRomeⅢ基準(過敏性腸症候群診断基準)にて診断します。
過去3カ月間で
- 排便によって症状が緩和する
- 症状によって排便回数が増減する
- 症状によって便の形状が変わる
上記のうち、2項目以上該当し、腹部不快感や腹痛が1か月に3日以上繰り返し起こった場合、医師によって過敏性腸症候群と診断されます。
過敏性腸症候群の治療
生活習慣の改善
まずは食事習慣を改善し、便秘や下痢の症状を緩和していきます。栄養バランスの取れた食事をすること、毎日決まった時間に規則正しく3食摂ること、高脂肪や刺激の強い食品を避けること、飲酒や喫煙を控えること、水分をしっかりと摂取することなどに気を付けます。また、良質の睡眠と適度な運動、趣味を楽しむなど上手にストレスを解消することも大切です。
薬物療法
便通異常の状態に応じて、薬物療法を検討します。服薬での症状改善を図りながら、治療経過を見て処方を調節していきます。